「ここでも雪は降るのね」
微かに聞こえた彼女の声につられ、窓の外を見る。
夕方から降っていた雨は、いつの間にか小さな雪に変わっていた。
「普段は全く降らないし、積もりもしないんだけどね。…ああでも、これはまたすぐに雨に変わるな」
街灯にちらちらと照らされながら落ちる雪は、水溜りに溶けて消えていく。
少し離れたスコットランドでは毎年のように雪が積もるらしいが、こちらではそれは当てはまらない。
そもそもあまり雪が降らない程度には気候が安定しているのだ。
「君の故郷は?」
「私のところは毎年のように積もるわ。それこそ数mもあるような壁が出来るときもね」
「へぇ…」
間違っても真冬には行きたくないな、なんて内心思っていると「冬には行きたくないって思ったでしょ」と声が飛ぶ。
「ダメよ。今年はお正月は日本で過ごすって約束したでしょう?」
「分かってる分かってる」
ムッと唇を尖らせた彼女にキスを落とす。
「ちょっと」
「君の御両親にも挨拶しないといけないしね。ちゃんと行くとも」
彼女に教えてもらった『ユビキリゲンマン』をすると、ふてていた顔が呆れたように笑った。
「まったく…調子がいいんだから」
「知ってただろう?」
「ええ、初めて会った時からね」
お互い顔を見合わせて、どちらともなく笑う。
そうしてまた窓の外を見ると、雪は霙に変わっていた。
「あら、もうそろそろ雨かしらね」
どことなく寂しげに言う彼女は、遠い祖国を思い出しているようで。
「…私の故郷はね、ここよりもうんと寒いけど、見てると温かいの」
言葉に首を傾げると、付け足すようにまた口を開いた。
「私の故郷は田舎だって前に話したでしょう?日本の田舎は木造の平屋が多くてね…、古き良きって言ったらいいのかしら」
「君の家も?」
「ええ。…雪の中にオレンジの灯りが灯って、微かに笑い声が聞こえてくるのよ」
西洋のクリスマスマーケットやエピファニーが華やかで光に包まれるような暖かさだとしたら、
日本の冬至やお正月は、手の平にそっとのせられた小さな柔い陽のような。
「…とてもいいところだね」
嬉しそうに懐かしそうに笑う彼女に言うと、こくりと頷く。
「ここもあっちも、どっちもいいものよ」
早く見せてあげたいわ。
笑みを浮かべる彼女に、今度は額にキスを落とす。
外の霙は雨に変わり、パタパタと窓を打っていた。
微かに聞こえた彼女の声につられ、窓の外を見る。
夕方から降っていた雨は、いつの間にか小さな雪に変わっていた。
「普段は全く降らないし、積もりもしないんだけどね。…ああでも、これはまたすぐに雨に変わるな」
街灯にちらちらと照らされながら落ちる雪は、水溜りに溶けて消えていく。
少し離れたスコットランドでは毎年のように雪が積もるらしいが、こちらではそれは当てはまらない。
そもそもあまり雪が降らない程度には気候が安定しているのだ。
「君の故郷は?」
「私のところは毎年のように積もるわ。それこそ数mもあるような壁が出来るときもね」
「へぇ…」
間違っても真冬には行きたくないな、なんて内心思っていると「冬には行きたくないって思ったでしょ」と声が飛ぶ。
「ダメよ。今年はお正月は日本で過ごすって約束したでしょう?」
「分かってる分かってる」
ムッと唇を尖らせた彼女にキスを落とす。
「ちょっと」
「君の御両親にも挨拶しないといけないしね。ちゃんと行くとも」
彼女に教えてもらった『ユビキリゲンマン』をすると、ふてていた顔が呆れたように笑った。
「まったく…調子がいいんだから」
「知ってただろう?」
「ええ、初めて会った時からね」
お互い顔を見合わせて、どちらともなく笑う。
そうしてまた窓の外を見ると、雪は霙に変わっていた。
「あら、もうそろそろ雨かしらね」
どことなく寂しげに言う彼女は、遠い祖国を思い出しているようで。
「…私の故郷はね、ここよりもうんと寒いけど、見てると温かいの」
言葉に首を傾げると、付け足すようにまた口を開いた。
「私の故郷は田舎だって前に話したでしょう?日本の田舎は木造の平屋が多くてね…、古き良きって言ったらいいのかしら」
「君の家も?」
「ええ。…雪の中にオレンジの灯りが灯って、微かに笑い声が聞こえてくるのよ」
西洋のクリスマスマーケットやエピファニーが華やかで光に包まれるような暖かさだとしたら、
日本の冬至やお正月は、手の平にそっとのせられた小さな柔い陽のような。
「…とてもいいところだね」
嬉しそうに懐かしそうに笑う彼女に言うと、こくりと頷く。
「ここもあっちも、どっちもいいものよ」
早く見せてあげたいわ。
笑みを浮かべる彼女に、今度は額にキスを落とす。
外の霙は雨に変わり、パタパタと窓を打っていた。
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